SRIのCenter for Geospace StudiesのLeslie Larmarcheは、他分野の研究者と関わることが不可欠だと語る
Leslie Lamarcheは2017年にアラスカ大学フェアバンクス校で物理学の博士号を取得し、その後はSRIインターナショナルのCenter for Geospace Studies(CGS、ジオスペース研究センター)でリサーチエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。
Lamarcheは現在、物理学者と電気エンジニアで構成されるチームの一員として、地球の大気に内在する基本的なプロセスの解明に取り組んでいます。Lamarcheへのインタビューでは、宇宙物理学に進んだ道やSRIでの職務、そして科学にはコラボレーションが不可欠な理由などについて質問をしました。
宇宙物理学を志したきっかけは何ですか?
私はアラスカのフェアバンクスにいた時にSuperDARN(Super Dual Auroral Radar Network:オーロラレーダー対(ペア)の超観測網)という、北半球と南半球にまたがる35超の高周波(HF)レーダーの国際共同研究システムに携わっていました。上層の大気と宇宙環境を局所的に調査することで、私はレーダーサイエンスの世界に少しずつ入っていくことができました。この調査に携わったことと、大学院の指導教官からの勧めにより、長らく科学的な目的のために非干渉性散乱レーダーを建設・運用していたSRIのCGSの博士研究員(ポスドク)に応募しました。私は大学院に入り浸りだったので応募する前はSRIのことをよく知らなかったのですが、大学院の指導教官からは、これはまたとないチャンスだと言われていました。面接では幸いにもCGSの多くの方々と会うことができ、知識豊富な人が多く革新的なことを行っているエキサイティングなグループだと思ったのです。
どのような仕事をされているのですか?
私の仕事は、助成金をもらっている案件やさまざまなミッションのサポートだけでなく、他の組織とのコラボレーションを必要とする興味深いプロジェクトなどと幅広く及んでいます。私の仕事の大部分を占めるのはレーダーデータの解析で、CGSが自ら設営して現在も管理しているNSFの先端モジュール式非干渉性散乱レーダー(AMISR:Advanced Modular Incoherent Scatter Radar)のデータを使った研究なども行っています。私は物理を専門としているので、エンジニアリングよりサイエンスの分野で参加することが多いです。エンジニアが構築したレーダーのデータを使ってジオスペース環境を分析して疑問の答えを見つけたり、別のことの背景的状況を確認したりしています。
SRIで取り組んでいるエキサイティングなプロジェクトを紹介してください
SRIにおける私の重要な職務のひとつは、レーダーで生成されたデータを使って科学的な疑問に取り組むことです。今は米国国立科学財団(NSF)の資金援助を受けて、電離層のプラズマ構造を調べるプロジェクトに携わっています。
最近は、AMISRのデータを数値シミュレーションと統合してプラズマ物理のさまざまな側面について研究しています。プラズマフローチャネルの密度と温度勾配やその他の大規模な現象は、プラズマの不安定性を引き起こす可能性がありますが、これらの現象はAMISRで直接測定できます。重要インフラの多く(GPSナビゲーションなど)は地上局から軌道上にある衛星との通信に依拠していますが、これは電離層を介していることから、大気中のプラズマの乱れは重大な問題となり得ます。これらのプロセスは複雑なので研究も難しいのですが、取り組むと非常に面白く、進展があれば満足感も大きいです。
仕事上、苦労したことや得られた成果を教えてください
ポスドク時代には、NASAのキューブ衛星(超小型衛星)ミッションに関する資金調達のプロポーザルに携わりました。このプロポーザルは成功しませんでしたが、プロジェクトの技術的側面とプロポーザルをまとめるプロセスの双方に深く関わることができ、また、光学機器や衛星ミッションの設計についても多くを学びました。また、ミッションのパラメータや制約を設定する際には、その背景にある科学的な考察や要件を理解する必要がありました。残念ながら、このミッションは資金獲得には至りませんでしたが、キャリアの初期に比較的大規模なプロジェクトに参加して学ぶ機会を得ることができたのはSRIでなければ得られなかった経験かもしれません。SRIの素晴らしいところは、エキサイティングなプロジェクトに参加できること、そして参加することで自分の専門性を発揮し、その過程で新しいことを学ぶサポートがあることです。
仕事において、コラボレーションは重要であると感じていますか?
私は共同で作業するのが好きです。SRIにはCGS内で共同研究する素晴らしい同僚がいますが、その他にも多くの機関や大学の人たちとも共同研究を実施しています。そのため、さまざまな分野の人たちが集まっています。疑問の全容を理解するには、さまざまな分野にまたがって他の人々も取り込む必要があります。
科学では、分野や知識のベースを超えてつながり、物事を異なる角度から見る能力が不可欠となります。同僚や他の人から学ぶことにオープンであることは、成功することに役立ち、新しい視点を提供してくれるとともに、本当に楽しいことなのです。
Lamarcheが関わっているプロジェクトについて、詳細はこちら(日本語ブログ):未来の衛星通信の改善につながる電離層シンチレーションのモデリング