パンデミックとなってから3年経った今でもSRIはCOVID-19に関する研究を続けている
2020年にパンデミックが始まって以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する研究は、安全かつ健康的、そして持続可能な未来を創り出すというSRIのミッションにとっては欠かせないものとなっています。このミッションを支えるべく現在も進められている研究について、SRI Biosciences部門の免疫学・ウイルス学担当ディレクターのMary Lanier博士に話を聞き、この対談の内容を抜粋してご紹介します。
SRIの免疫学・ウイルス学ディレクターとしての仕事について教えてください。またCOVID-19との闘いに関しても詳しく聞かせてください。
私のグループは、COVID-19と対峙するための新しい抗ウイルス化合物や免疫治療に使用する化合物を試験するアッセイの開発とその標準化に重点を置いて研究しています。SRIは契約研究機関(CRO: contract research organization)として、感染予防やウイルスの直接標的、あるいは免疫機能を標的とするとみられる数百種類もの再開発医薬品(ドラッグリポジショニング)、新薬製剤、新しい分子の試験を行ってきました。この研究の包括的な目的は個人に応じたCOVID-19の効果的な予防と治療の方法を新たに開発することですが、最終的にはすべての人々の健康を守り、命を救うことを主としております。
COVID-19の研究を行う上で、グループが直面した最大の課題はどのようなことでしたか?
COVID-19の原因となるウイルスは新しいものであったため、治療薬候補の効果や安全性を評価して生物学的に適切かつ現実的なモデルを開発することが重要だったのですが、これが大変難しいことでした。加えて、この新しいウイルスは致死性が高かったことから、その研究には厳しい要件が課され、その結果、バイオセーフティレベル3(BSL-3)という高レベルでの取り扱いが必要となりました。SRIは、BSL-3の病原体を扱える施設と専門知識の両方を有する数少ない研究所のうちの1つであり、COVID-19が世界的な脅威となってから数週間後には、迅速にリソースを動員してこのウイルスやワクチン、抗ウイルス治療薬に関する実験を開始しました。
今後、同じような健康への危機に対峙する時のアプローチについて、この仕事がどのような影響を与えることができると思いますか?
私たちは、新しい病原体に対する初期段階の治療法の有効性を測定できるアッセイ開発のベストプラクティスを積み重ねていますが、これらのアッセイが感染症のモデリングやヒトへの治療に最終的にどのように変換できるのかを理解する必要がまだあります。私たちは現在、抗ウイルス化合物の有効性測定を複数のアプローチにて比較することで、その解釈を最適化して次の段階の試験に進むための有望な抗ウイルス化合物を選択しています。パイプラインとなるこの部分を最適化できれば、効果的な予防や治療の方法の開発がより早くなるとともに、今後また別のウイルスが発生した時には、人々を守るべく重要な役割を果たせるのです。
SRIの免疫学・ウイルス学グループは、COVID-19の研究のほかにはどのような分野で安全で健康的な未来に向けて取り組んでいるのでしょうか?
SRIの免疫学・ウイルス学グループは現在、ワクチン用の新しいアジュバントの開発に関わるプロジェクトにも取り組んでいます。アジュバントとは、ワクチンに添加可能な成分であり、そのワクチンを受けた人がより強い免疫反応を起こし、ウイルスに対してより高い免疫水準を獲得できるようにするものです。また、重度の食物アレルギーの治療法の開発にも取り組んでいます。米国では約2,000万人が食物アレルギーを有しており、そのうち小児が400万人を占めています。ここ20年の間に、米国の小児では食物アレルギーの有病率が上昇しているので、悪い転帰をたどらない治療法の開発は現在、特に重要な意味があるのです。