最も過酷な条件に適合する材料の開発に成功

高効率の太陽光発電所にて、SRIの新しいセラミックス基複合材料(CMC: Ceramic Matrix Composites)の性能を発揮

SRIは極端な高温や腐食しやすい環境に耐えられるセラミックス基複合材料の進歩に寄与


アメリカのアリゾナ砂漠の広大な乾燥地帯で、再生可能エネルギーの革命が起こりつつあります。SRIのシニアリサーチャーであるJunhua Weiとその同僚たちは、極端な高温や腐食しやすい環境に耐えられる素材としてセラミックス基複合材料(Ceramic Matrix Composites:CMCs)の先駆的な開発に取り組んでいます。

この研究は、太陽エネルギーシステムの効率改善と持続可能性の向上を約束するもので、具体的には膨大な熱を利用してエネルギーを溶融塩(molten salt)に蓄える集光型太陽熱発電所が対象です。

SRIのこの複合材料は、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)の資金提供を受けたプロジェクトで、従来のセラミックスが持つ、もろくて割れやすい性質を克服するよう、設計構造を改良して過酷な条件に耐える材料を開発しています。

「鋼鉄のような従来からある金属は、太陽光発電所の過酷な条件下では機能しなくなるため、より耐久性のある材料の開発が必要でした。SRIの複合材料の特徴は、セラミック前駆体に含まれるセラミックの粒子を化学的に結合させてセラミックマトリックスを一体化させる技術です。これは、一般的に破壊点となるクラック(ひび)の発生防止において非常に重要な技術で、最終的に材料の寿命を延ばし、信頼性も高めます」とWeiは述べています。

SRIが開発したこの高機能CMCsは、集光型太陽光発電所の性能や耐久性、費用対効果を高め、より持続可能で効率的な太陽エネルギーシステムに寄与します。その結果、エネルギー生産による環境への影響を軽減し、再生可能エネルギー源の利用を促進することにも役立ちます。

「私たちの複合材料は、従来のセラミックスの、もろくて割れやすい性質を克服するよう設計されています」―Junhua Wei

従来のCMCsは通常、セラミックマトリックス内に炭素繊維や炭化ケイ素繊維を配合して強靭性を高めています。SRIの新しいメソッドは、セラミック前駆体内のセラミックの粒子を強化繊維に化学的に結合させることで、セラミックマトリックス形成時に発生するクラックやボイド(空隙)を抑制します。 CMCのクラックやボイドの発生予防を目的としたセラミックの含浸工程は費用や時間がかかりますが、SRIの新しいCMCではこれを省けることから、最終的には製造コストの削減につながり、現在のCMC複合材料の市場価格を下げることができます。

高機能CMCsの有望とされる用途は、高効率の集光型太陽光発電所です。この発電プラントでは太陽光を集光して溶融塩を加熱し、エネルギーを貯蔵します。ここでは高温と溶融塩の腐食性が課題となっており、従来の貯蔵庫の材料では経年劣化が避けられません。
SRIのこの材料は、耐久性と耐腐食性、そして低コストを実現します。SRI独自のプロセスによって、材料の開発・製造コストは50%削減され、材料の性能は向上しています。また、複合構造を最大限に活用して、デジタルツインデータのフィードインに対応できるセンサー内蔵システムの構築を目指す工程開発にも重点的に取り組んでいます。

高密度のCMCは、複合材料の中にセラミック粒子をおよそ20%(体積比)含んでおり、極超音速機の耐アブレーション断熱システム、工業用の炭素除去装置で使用する熱伝導性の高い熱交換器、核融合施設の第一壁の構造材料などの用途に適した特性を備えています。

「集光型の太陽光発電所で使用される材料の強度を高め、寿命を延ばすことで、SRIは再生可能エネルギー源の効率改善と持続可能性の向上に寄与し、材料科学における重要な一歩を示すことができます。この技術革新は、過酷な条件下で使用する堅牢な材料の重要性を強調することで、より信頼性と費用対効果の高い再生可能エネルギーソリューションへの道を切り開くものです」とWeiは述べています。

SRIの材料プログラムの詳細を知りたい方は、こちらまでお問い合わせください。


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