SRIは米政府のパンデミック対策用抗ウイルス剤プログラムの一環として、国立アレルギー・感染症研究所から4年間495万米ドルの助成金を獲得
独立系の非営利技術研究機関であるSRIインターナショナルは、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から、新規または既存のウイルス性病原体に対する米国内での治療手段を増やすことを目的とした薬剤の開発に対し495万米ドル(最大2,100万ドルの増額オプション付き)の助成金契約を獲得しました。
この助成金は、米国政府のパンデミック対策用抗ウイルス剤プログラム(Antiviral Program for Pandemics:APP)の一環としてパンデミックを引き起こす可能性のある複数のウイルス科(ファミリー)に割り振られており、パンデミックの発生に先立って治療法を開発できるよう支援するものです。医療従事者や疾病の研究者が新興の感染症と対峙し、流行の初期段階で感染が広範囲に広がることを防ぐために必要な手段として提供できるような、新しい治療薬への投資がAPPには含まれています。しかし、連邦政府はAPPの発足前から、有望な治療薬の審査や臨床試験の実施といった重要な業務の外部委託を始めていました。
この100年間、エピデミックレベルやパンデミックレベルのウイルスが数多く発生していますが、ここ20年でも豚インフルエンザ(インフルエンザH1N1)、チクングニアウイルス、エボラウイルス、ジカウイルス、サル痘ウイルス(エムポックス)、MERS、SARSなどをあげることができます。新興感染症の増加は、人口増加や気候変動、生息地の喪失、旅行者の増加などが要因となっており、深刻なアウトブレイクが発生する可能性が高まっていることを表しています。
NIAIDの助成金プログラムの研究責任者を務め、SRIのバイオサイエンス部のプレジデントであるJon Mirsalisは、「次のパンデミックに向けた治療薬を開発することは容易ではない上に、特に利益を生むわけでもないので、このような医薬品開発の大部分は連邦政府の意向に左右されるのです」と述べています。
有望な薬剤を優先する
SRIがNIAIDと抗ウイルス薬に関する契約を初めて締結したのは1991年であり、この時はHIVの治療薬の研究に取り組みました。その後は炭疽菌やエボラ出血熱、薬剤耐性菌、C型肝炎などの感染症の発生や脅威を対象とした契約が追加されてきました。SRIは30年以上にわたり、FDAへの治験薬申請(IND)に必要な薬物動態と安全性に関する試験をすべて実施できる能力を活かして、50を超える治療薬の基礎研究から臨床試験までの進捗を支援してきました。
SRIは感染症治療薬の開発分野で多くの経験を積んでいますが、政府との契約締結するためには医薬品化学や製造、薬理学、毒性学など各分野における候補者の中から全ての競争を勝ち抜いて選ばれなくてはなりません。SRIの医薬品開発における先駆的な取り組みと確かな実績は、この分野でのリーダー的役割を確かなものとしており、抗感染症薬の開発に関連する業務で2億米ドル超だけでなく、その他の治療薬の分野でも数億ドルを獲得しています。SRIはこれまで数千もの医薬品の開発に貢献していますが、そのうちおよそ200の臨床試験を実施しており、20以上が承認取得に至りました。
新型コロナウイルス感染症からの学び
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、現代科学力とSRIのような研究所機関が協力することによって作り出せる潜在力を浮き彫りにしました。新しい抗ウイルス薬の開発に成功したことに加え、SRIは新型コロナウイルスやインフルエンザ、薬剤耐性菌などさまざまな病原体に対する創薬、開発、試験のプログラムを精力的に遂行しています。今回のNIAIDからの助成金は、新しい抗感染症の治療薬とワクチンの創薬および開発というSRIの広範なプログラムの一環を成すものです。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)や他のウイルス病原体の抗ウイルス薬開発で多くの民間組織と協力している、SRIバイオサイエンス部の免疫学およびウイルス学ディレクターのMary Lanierは、「SRIでは、病原体等を隔離できる研究施設で抗ウイルス剤の開発から試験までを実施できるので、抗ウイルス薬の創薬を支援するにあたって有利な立場にあります」と述べています。
APPは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生時に不十分であったことの検討内容をふまえて、将来のウイルスによるパンデミック発生時における国の対応と備えを構築すべく創設されました。今後は、未知の疾患が発生したら数時間から数日のうちに病原体を診断し、その疾患の治療やパンデミックの脅威を初期段階で阻止もしくは軽減できる薬剤群を利用できるようになることを理想的としています。「今このような投資を行っていることにより、私たちは次の新興病原体に対して、これまでより有利な立場に立つことができると確信しています」とMirsalisは述べています。
本事業は、契約番号HHSN272201800001I、タスクオーダー75N93022F00011の下で実施されます。