
SRIの発光素子アレイは、小型衛星の「constellations」内で光通信ネットワークを高規格で使いやすくすることを目指す
私たちの頭上に広がる大空ではすでに、従来の大型で高額な人工衛星 に代わって、小型で安価な人工衛星たちがさまざまな目的を同時に達成しようとしています。こうした人工衛星群が壮大な距離の宇宙空間で互いに通信するネットワークが必要となり、これが大きな課題となっています。
近い将来で最も有望視されている宇宙での通信技術は、光のビームを使ってデータを送受信することです。SRIの科学者たちは、超高速の衛星間通信に存在する技術的な課題を解決するため、サイズ(size)、重量(weight)、そして消費電力(and power)を表すSWaP がこれまでよりも少なく小さい薄型の光アレイの開発に力を注いでいます。
SRIの応用物理ラボ(Applied Physics Lab) に所属するリサーチエンジニアでフォトニクスの専門家であるNicole Heidelは、「大きな課題の一つが、エネルギー需要と重量を最小限に抑えつつ、直径の大きなビームを作ることです」と述べています。SRIのチームは新しい光通信望遠鏡を開発し、薄型シリコンウエハー上に大口径の光フェーズドアレイ (Optical Phased Array:OPA)をつくるための光集積回路を搭載しました。これは、重量が極めて軽いにもかかわらず、ビームの質が向上しており、しかも制御はこれまでのものほど複雑ではありません。
パラダイムシフト
「私たちのアプローチは、宇宙空間でマルチターミナルとして運用する超小型衛星(キューブサット)や小型衛星(スモールサット)に超小型望遠鏡を提供し、これを衛星間のネットワーク通信に使用するものです」とHeidelは述べています。
身近なものではレーザーポインターで使われている鉛筆の先端のように細いビームがありますが、SRIのビームは直径が5センチメートル(約2インチ) ほどです。アレイ上の1つ1つは小さい 64個のエミッターから放出される光が集まり、太く強力なビームになります。ビームのこの太さが通信においては非常に重要です。受信機がコンステレーション内の他の衛星からの信号を受信し、通信を維持し続けることができるのは、長距離を進む間に発生する光の減弱と、それによる信号の質の劣化をこの太いビームが抑えてくれるからです。
「大きな課題の一つが、エネルギー需要と重量を最小限に抑えつつ、直径の大きなビームを作ることです」―Nicole Heidel
分割して増幅させる
技術的には、SRIのOPAは1本の光ファイバーケーブルからの光を分割し、それぞれ位相制御できる光エミッターを64個配列して、ここから分割したビームを放出します。各エミッターは正確に位相制御できることから、この配列されたエミッターから大きく強力な1本のビームを放出することができます。ほかのOPAはかなり小さいエミッターで広角のビームを放出しますが、SRIのものはこれと異なり、大きなエミッターで面積を広く放出することを目標としています。
「このアプローチにより、宇宙で必要とされる長距離を進むことのできる高品質のビームが実現できます。また、これまでのものと比べて複雑ではないことから、非常に小サイズ、軽量、低消費電力の望遠鏡を作ることができます。薄さはまさに、二次元であるといえるほどです」 。
さらに、起動時のエネルギー効率も非常に良好です。5センチメートル口径の望遠鏡に搭載されている移相器をすべて合わせても、消費電力は1ワットにもなりません。SRIの望遠鏡は、互いに協力し合う衛星が信号を受信して通信を維持するのを支援するため、こちらから積極的に送信ビームを放出し、ステアリングする こともできます。
新たなアプローチ
SRIのアーキテクチャは、ビームを太くするため現在の技術で必要とされる大型の光学機器を必要としません。また、他の光学制御装置も、従来の望遠鏡のように支持躯体や建物を必要としないため、それにより大型で非効率、そして高額となることもありません。
Heidelによると、SRIの望遠鏡の最適なサイズと重量は、現在および将来のビームステアリング機能に対応して決められるため、ステアリングに関するサブシステムのサイズを小さくし、軽量化できる可能性があるということです。
「このアーキテクチャは最終的に、光アレイの厚みをそれほど増やすことなく、10センチメートルの大口径にできると考えており、私たちはこの目標に向かって取り組んでいます」とHeidelは述べ、今後の研究の方向性を示唆しました。
SRIは、小型CubeSat衛星の開発と配備に貢献してきた長い歴史があります。これには、衛星通信、宇宙航行、小型化センサーの進歩が含まれ、地球観測、宇宙気象モニタリング、科学実験など、さまざまな用途でのCubeSatの利用を可能にしています。宇宙における私たちの取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。