設計の過程において、新素材の活用方法の革新を目指す

SRIのシステムは、構築にかかるコストや時間、構造性能や熱性能など、様々な要因を考慮した最適解を導き出す

金属部品の次世代コンピュテーショナルデザイン、および合金のテスト自動化の開発に関してDARPAがSRIを選定


SRIは、米国防高等研究計画局(DARPA: Defense Advanced Research Projects Agency)が最近立ち上げたプログラム、「合金構造物の多目的設計・テスト(Multiobjective Engineering and Testing of ALloy Structures:METALS)」に先端技術を提供する企業として選定されました。

DARPAのMETALSプログラムは、1つの部品に対して材料は1種類であるという現行のパラダイムの打破を目的としています。このパラダイムにより高度に設計された部品は過酷な環境に置かれたとき、脆弱性の発現や寿命の低下につながる可能性があります。このため、METALSの4ヵ年プログラムの目標は、材料、特に金属合金の選択手法に関わるテクノロジーを開発することです。これは、ある1つの部品の様々な要因を全体として最適化することができるよう、材料の特性を設計時の連続変数として組み込むことを意味します。

材料の特性を設計過程に組み入れる

SRIのアプローチは設計領域を根元から拡大するものであり、システムレベルの性能からコスト、そして持続可能性に至るまで飛躍的な進化(ブレイクスルー)を可能にします。SRIと共同研究者たちは、設計プロセスに材料を組み入れる新手法を開発するとともにし、先端材料の特性に関する迅速なテスト自動化に新たな境地を切り開きます。SRIはAIをベースとしたマテリアルズ・インフォマティクス(情報科学を用いた材料開発の効率化)を活用して情報を提供することで、材料テストを介した新たな設計空間を探求します。

この研究は、現在はSRIである旧パロアルト研究所(PARC: Palo Alto Research Center)のFuture Concepts division(未来コンセプト部門)の研究者たちが主導しています。このチームは10年以上にわたりデジタル設計・製造に関する研究の最前線に立ってきました。

現在、設計者たちは、材料科学者が提供する材料、つまり、部品や用途の特定のニーズにとって必ずしも最適とは言えない材料の中から、個別に選択した材料で設計をしなければなりません。

部品設計における材料の新しい考え方を構築する

SRIの設計・デジタル製造(Design and Digital Manufacturing)部門のリサーチディレクターであり、このプロジェクトの主任研究員を務めるMorad Behandishは、「3次元の空間で材料を変化させつつ、冶金上の制約を並行して考慮できる設計ツールは存在しません。私たちは、望ましい特性を有する構成要素(コンポーネント)をその場で作成して必要な場所に正確に配置し、将来の使用環境でテストまですることで、現存しない新しい合金の構想を可能にする設計ツールを構築しているところです」と述べています。

「金属積層造形技術によって、このような構成要素(コンポーネント)が作れるようになっています。しかし、例えば金属疲労やクリープ、高温下における腐食のような長期的特性の進行を大規模に予測するには、このプロジェクトで開発する予定の『根本的に新しいテスト方法』が不可欠です。これは現代の製造と応用が秘めている真の潜在力を解き放つことにつながります」とBehandishは付け加えます。

「SRIのシステムは、設計形状と材料を同時に変化させ、多くの要因を最適化しようとするものです」-Morad Behandish

SRIはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC: University of Illinois Urbana-Champaign)、およびカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD: University of California San Diego)と提携し、テストの実験に使用するMIDAS-X(Material-Integrated Design with Agile Sampling、アジャイルサンプリングによる材料統合設計)を開発しています。SRIのジェネレーティブデザイン研究とAIに関する能力、斬新なテスト方法を有するUIUC、そして製造に関する独自の能力を備えるUCSDは、非常に革新的なアプローチを採用できる強力なチームです。SRIは、既存の材料を最大限活用するとともに、新素材を発見するため、迅速なテストに基づき材料の実現可能性に関する理解を進化させる設計ツールを構築しようとしています。

材料の特性評価を証明するため、まずは設計する

SRIのシステムは、設計形状と材料を同時に変化させ、多くの要因を最適化しようとするものです。つまり、製造コストや時間、構造性能や熱性能、サプライチェーンのリスクなどさまざまな要因を考慮した最適解を導き出します。このシステムは独自のアプローチによるもので、電子顕微鏡で観察できるナノスケールの事象から特性の進行を予測するという、UIUCの最近の発見に基づいています。これを用いると、材料の特性評価が桁違いに迅速に行えます。

「このプログラムは、コンピューテーショナルデザインや材料科学、デジタル・マニュファクチャリング、AIの各分野におけるイノベーションが交わる心躍る機会で、材料の設計・製造・評価方法の転換点となるものです。最も大きな影響はハイエンド分野への応用で、人工の工学機器に人命が託される場合などは特にそうですが、現行の方法では時代遅れともいえる工学的手法に依拠しているため、設計サイクルや材料システムの導入に多大な時間とコストがかかるのです」とBehandishは力説しています。

Distribution Statement A: Approved for public release, distribution is unlimited.(配布に関する言明A:一般公開を承認、配布は無制限)


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