SRIの支援のもと、Encounter AIのCEO兼共同創業者は外食の注文方法に変化をもたらし、顧客体験を改善
Encounter AIのCEO兼共同設立者であるDerrick Johnsonは、SRIのSpeech Technology and Research (STAR) ラボの専門的な知識を活用して、アメリカの外食産業のドライブスルーや注文システムを支える音声技術の改善に取り組んでいます。このブログでは、Derrick自身のこれまでのキャリアと、物事の仕組みを理解したいという深い思いが、いかにしてスタートアップ企業であるEncounter AIの起業へとつながったのかについて語っています。
テクノロジーの世界で働くことは、私にとっては当たり前のことです。私はシカゴ南部で育ちましたが、住んでいたところから1マイル四方の範囲にドライブスルーのある大手チェーンのレストランが大半揃っていたので、利用客の立場からもこの世界をよく理解していました。子供のころは、アニメの宇宙家族ジェットソン(The Jetsons)のような未来の世界を描いたテレビ番組を見たり、いろいろな物をいじったりするのが好きで、家電量販店であるラジオシャックの電子工作キットを両親からもらって玄関の警報装置を作ったことも覚えています。その頃から、大人になったらテクノロジーに携わりたいと思うようになりました。
成長するにつれ、私は自ら進んで研究開発に携わるようになりました。百貨店のKohl’sや旅行会社、ディズニーのホテル、大手コンサルティング企業で働いていたときに、ビッグブランドが人工知能(AI)をどのように活用しているかを直接目の当たりにし、これらの経験が私にインスピレーションを与えてくれたのだと思います。つまりデータサイエンスや機械学習などのテクノロジーを活用することで、身近なビジネスや地域が一変する可能性があるとわかったのです。やがて、最も斬新なアイデアは、自分が見たり学んだりしたさまざまなことを合成することで生まれるのではないかと思うようになりました。
数年前、私はレストラン関連のテクノロジー企業であるEncounter AIを共同設立し、ドライブスルーやキオスク(コンビニ等)、電話を介した注文の受け方を改善できる会話形式の音声AIシステムの開発に取り組みました。なぜなら、コンサルティング企業で業務関連のトリアージ(業務の優先順位付け)にかかわった際に拡張性の高い従業員ソリューションの必要性を感じていたこともあり、これは重要なアイデアだと思っていた背景があったからです。食事の注文方法のデジタル化は新型コロナウイルス感染症の真っ只中でもさらなる進展をみせており、レストランはスペースの制限もある中、増え続けるドライブスルーの車をさばきながら、従業員と顧客双方の小売業態そのものを向上させようとしています。
そのためには、高度な音声技術が必要だと私たちはわかっていました。
私とSRIは、LinkedInのアウトリーチメッセージを介して出会いました。以前から私たちは多少なりともマーケティングや広報活動をしていましたが、ちょうど同じタイミングでSRIのSpeech Technology and Research(STAR)ラボも、私たちに役立ちそうな新しい音声技術について研究開発していました。手を組むことで私たちはSRIの研究に役立つと思われるデータを提供することができ、SRIも、私たちが解決できなかった若しくは他の外部リソースを活用しても解決できなかった課題を解決することができたのです。最初の接見から協議は進み、数カ月後にはテスト用の製品を提供してもらえました。この進捗スピードには本当に感動しました。
現在では、SRIのOLIVE音声システムから生まれたSRIの先進的なASR(音声認識)プラットフォームを採用しています。ASRは自然言語処理技術を使って音声をテキストに変換することができ、これにより私たち側のシステムが言葉や話し方のわずかな手がかりを利用して、人が何を言っているのかをよりよく理解できるようになり、注文のプロセスをよりスムーズにすることができるのです。例えば、ドライブスルーでハンバーガーを注文したお客様が沈黙した際に、次の商品を考えるためにいったん間をおいたのか、それとも注文を完了したのかを判断して、適切な対応ができるようになったのです。
この分野では、これからも本当に面白いことがたくさん待ち構えています。ChatGPTのような大規模な言語モデルにも大いに期待していますし、これは歴史的に見てもテクノロジーの一つの分岐点でしょう。生成AIはイノベーションを一変させ、アイデアがあってもどのように公開すればよいのかわからなかった、新たな人たちやグループを支援するでしょう。私自身が特に期待を寄せているのは、機械学習やAIの分野に黒人や有色人種の人たちが参入し、この次世代の人々がどのような問題を解決するのかについてです。今現在、食糧難にある人々が、その食糧難が二度と起こらないようにするために、この新しい技術に関する理解を深められるのか?などといったことに大いに興味をそそられています。
私は、自身が今まで歩んできた道筋と、ここまで到達できたことを誇りに思っています。特に、SRIとのコラボレーションが誇らしいです。私たちの会社が必要としているものは何であるかは理解してはいましたが、果たしてそのようなものが存在するのか、または誰かがそれを探求しているのかどうかも知らなかったのです。
SRIと一緒に仕事ができる事は、まるで偉人たちの積み重ねた実績の上に立っているような気分にもなります。なぜならSRIが何十年もかけて研究してきた研究の成果を、私が活用して自らの会社に役立てることができるからです。また、資本を投入することなく、コアとなるテクノロジーを手に入れることが出来るので、資金面でも恩恵を受けることができたことには驚きました。私にとって、これは本当に革新的なことでした。