SRIのゲノムブラウザであるGenome Explorer:機能が拡張され、ユーザー体験が大幅にアップデート

SRIのゲノムブラウザにアクセスするリサーチサイエンティスト

ダイナミックに反応する拡大縮小機能と高密度の表示が可能で、ゲノムのナビゲーションがより容易に


家庭用の家具を組み立てる時に説明書が難しいと思うのであれば、ゲノムに含まれている生命の説明書を理解するのがどれほど困難であるかを想像してみてください。ゲノムとは、細胞のDNAに格納されている全遺伝情報のセットですが、これは膨大かつ複雑で、頻繁に変化するものなのです。

SRIは今回、遺伝子内のナビゲートをしやすくするため、自社のゲノムブラウザGenome Explorerを大幅にアップデートしました。ゲノムブラウザはウェブブラウザに似たものであり、巨大なゲノムデータベース内の情報を検索できるインタラクティブなプラットフォームです。SRIのGenome Explorerはゲノムの可視化機能において、高速で応答性の高い拡大縮小、あるいは移動をしつつ、ユーザーの解析が可能な高い情報密度で表示されます。

SRIのバイオインフォマティクス・リサーチグループのテクニカルディレクターで、Genome Explorerの開発者である Peter Karpは次のように述べています。「ゲノムブラウザは、バイオ関連の研究・実験を行う技術者や遺伝学者などの科学者、そして教員や学生が抱く疑問を解決してくれる、欠かすことのできないツールです。今回のアップデートでは、より速く、より簡単に、かつ、より強力に情報探索ができるようにしました」

Karpと同僚たちはmSystems誌に掲載された新しい論文で、Genome Explorerの機能を紹介し、現在使用されている他のゲノムブラウザと比較しています。SRIのGenome Explorerのルーツは、1995年に初めて自由生活生物であるインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の全ゲノムが解読されたときに遡ります。

拡大縮小も巧みに

ゲノムブラウザの拡大縮小(ズーム)機能に関しては、科学者が非常に幅広い縮尺(スケール)でゲノムを観察できるようにする必要があります。そのスケールは、最も高く広いレベルの染色体(生物特有の細胞の集合内に見られる、ぎっしりと詰まった遺伝物質のらせん構造)から、個々の遺伝子配列にまで至ります。

遺伝子数が1500程度の単純な生物でさえ、捉えるのは難しいです。例えると、高度1500フィート(約457.2メートル)で街を俯瞰し、道路標識やその間にあるすべてのものを読み取るようなものです。この例に着目したKarpは、ゲノムブラウザの空間スケールのナビゲーションについて、デジタル地図を使って道順を調べたり、関心のあるエリアを見つけたりする経験になぞらえています。

「地図を見ると、空間の関係についての疑問が解決するのと同じように、ゲノムブラウザを見ると、例えば、遺伝子群や遺伝的制御要素、またその周辺についての疑問に答えられるのです。このような情報は、遺伝子がいつオンになるのか、またオフになるのかについての知見を与えてくれますが、これは研究において非常に重要なことです」とKarpは述べています。

「私たちのアプローチは、ユーザーがゲノム内の空間的な関係を迅速かつ確実に把握するのに役立ちます」―Peter Karp

この新しいGenome Explorerは、ズーム機能をこれまでよりスムーズかつ速くできるようにしました。ユーザーは、疑問に思うことを観察し、解決できる縮尺にリアルタイムで拡大縮小できることから、無駄な時間を費やして研究者がペースを落とす混乱と遅れを回避できます。深い域のズームになるほど、遺伝子名や転写因子名、低分子RNA結合部位などといった、より多くの情報がポップアップで表示されます。また、Genome Explorerはユーザーのマウス位置を中心に拡大縮小して元の観察対象を追跡できることから、ナビゲーションも容易です。

ユーザーに分かりやすい表示

Genome Explorerのもう一つの際立った特徴は、各要素の空間における関係を効果的に伝えるグラフィカルなユーザーインターフェース(UI)です。Genome Explorerは他の大半のブラウザに比べより直感的な表示を提供でき、データ検索と並行して関連のある遺伝子のダイアグラムを表示します。このアプローチは、垂直方向により多くのスペースを効率的に提供することで、通常どおり遺伝子配列を全体的に伝えつつ、ゲノム要素が互いに重なっている場所を示してくれます。

「私たちのアプローチは、ユーザーがゲノム内の空間的な関係を迅速かつ確実に把握するのに役立ちます」とKarpは述べています。

このブラウザは近々、他の生命体にも拡張され、高速かつ滑らかなブラウジングが可能になる見込みです。Karpは、SRIが独占的に提供している、20,000を超えるゲノムのデータベースであるBioCycを介し、無料の大腸菌(Escherichia coli)データベースを試しに使ってみることを研究者たちに勧めています。

「Genome Explorerを現在使っているユーザーに新たな拡張機能を体験してもらうのも、新しいユーザーにGenome Explorerを試してもらうのも、とても楽しみです。Genome Explorerは、生物学と遺伝学の研究にとって素晴らしいツールなのです」とKarpは述べています。

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