多才な科学者のチームによるこの研究は、HOPO 14-1の安全性を確立するために不可欠なデータを提供する
不注意または悪意による放射線被曝は健康に悪影響を及ぼす可能性があり、内部被曝の治療は現在、浸潤的で時間がかかります。SRIインターナショナルはこれまで体内の放射線汚染を治療する新しい経口服用の実験薬HOPO 14-1の非臨床開発に取り組んできました。米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の一部である米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID: National Institute of Allergy and Infectious Diseases)の資金援助を受けたこの試験は、健康な被験者におけるHOPO 14-1の安全性と忍容性のプロファイルを明らかにすることを目的としています。
これまで承認されていた超ウラン核種の除染剤であるジエチレントリアミン五酢酸 diethylenetriamine pentaacetate(DTPA)は静脈内投与かネブライザーによる吸入しかできず、いずれもHOPO 14-1の経口投与に比べて多くの人数を迅速に治療するには実現性の低い選択肢であるため、この薬剤の開発は特に斬新なことでした。投与経路がより簡単になるということは、緊急的な放射線汚染の状況下で人々を迅速に治療する鍵となります。治験の第1相試験に移行するにあたり、SRIのバイオサイエンス部門で取り組むこの研究は、欠かせないものでした。
HOPO 14-1の10年にわたる創薬・開発から初のヒト臨床試験まで
放射性汚染物質(放射性核種)を体内から除去する薬剤が必要となる状況はいくつか考えられます。放射性核種は自然災害の後、または原子力発電所や核物質貯蔵施設に影響を及ぼす事故が発生した時、あるいは核戦争時に放出されることがあります。このような時に放出した放射性核種は人体に吸収されると、DNAや組織、臓器が損傷し、長期にわたる深刻な健康被害をもたらす可能性があるのです。放射性汚染物質に被曝した場合に起こり得る健康への深刻な悪影響を軽減させる最善の治療戦略は、放射性核種を体内から可能な限り迅速に排出させるキレート剤(放射性核種と結合する化合物)を投与することです。
「HOPO 14-1の非臨床試験では、これが効果的かつ効率的な放射性核種の排出剤であることが示されました」と、SRIのバイオサイエンス部門シニア・サイエンティフィック・ディレクターのPolly Changは述べています。
Chan博士とそのチームは10年超にわたり、HOPO 14-1の発明者である故Pat Durbin博士、およびローレンス・バークレー国立研究所のKen Raymond博士並びにRebecca Abergel博士と共同研究を行ってこの医薬品を開発しました。
「SRIの多才な科学者のチームは、安全性試験と薬理試験を実施するとともに、FDAへの承認申請をサポートしており、現在は第1相の安全性に関する治験を実施しています。安全性、薬理学、製剤、製造、ヒト臨床試験など、必要とされるさまざまな業務をすべて実施でき、かつ、パートナー機関と協力して実施する有効性試験を支援できるSRIは、この業務を遂行するにあたり唯一無二の存在となっています。」とChang博士は述べています。
HOPO 14-1の将来展望:臨床試験から市場へ
この臨床試験の主な目的は、健康な成人におけるこの薬剤の安全性と忍容性を実証することです。最終的にこの薬剤が一般に使用可能に、かつ入手可能にするにあたり、これらの結果を得ることは必須です。
「この初となるヒト臨床試験の結果は、この製品の安全性と、体内での分布、そして体外への排出の両方を理解するために重要です。この試験が、最終的な上市承認に向けてこの製品が進む道を切り開くことを期待しています。」とChang博士は述べています。
ヒト臨床試験としては初となるHOPO 14-1の第1相試験はSRI臨床試験ユニットの医師研究員であるSascha N. Goonewardena医師が主導しており、ミシガン州プリマスにあるSRIのサイトにて実施しています。この試験は2023年4月に開始されました。
この臨床試験の詳細はclinicaltrials.govの試験番号NCT05628961にて入手可能です。
本プロジェクトの資金の全部または一部は、契約番号75N93020D00011のもと、米国国立衛生研究所(NIH)のアレルギー・感染症研究所(NIAID)から連邦資金を供与されています。本プログラムの総費用は連邦政府からの資金で賄われており、本プログラムには現在44,496,261米ドルの資金が投入されています。本プログラムの費用は政府以外の資金源から調達することはありません。