SRIの研究者たちが1000本以上の子ども向けYouTube動画を視聴して判明したこと


読み書きや算数を教える早期教育を目的としたYouTube動画の大半には、キャラクターやストーリーが採用されていない


YouTubeには膨大な量の子ども向け動画コンテンツがあり、幼い子どもたちがこれを見ながら時間を過ごすことが増えています。ある調査によると、2020年の時点では、6歳未満の子どもたちはテレビを見る時間よりもYouTubeで動画を見る時間の方が長いとのことです。

SRIのシニアエデュケーションリサーチャーであるClaire Christensenは次のように述べています。「これは非常に大きな状況の変化です。子どもたちが見ているものは、スタジオが制作したものではなく、その大半が一般人によって作られたものなのです。そして、これらは子どもたちの成長や健康、学習にどのような影響を与えるのかわかっていないのです」

Christensenと彼女が所属するSRIのチームは、幼稚園児や保育園児に読み書きや算数を教えることを目的とした早期教育を扱うYouTubeの動画について、その内容を調査してきました。先日、白書(white paper)にて発表したとおり、調査の結果、YouTubeの動画には子どもたちの「学び」を支援する重要な特徴が欠けていることが多いことが判明しました。

研究者たちが分析した1,200本の動画のうち、キャラクターが登場するものは半分にも満たなかったのです。子どもたちを引き付ける司会者やキャラクターが存在しない代わりとして、学習につながる歌が使われているものが多くありました。「専門家としての私の意見を述べると、これは子ども向けテレビ番組とは大きく異なります。子ども向けのテレビ番組で、目に見えて愛嬌のあるキャラクターがいない番組はほどんどありません。この研究によると、友達のように感じられる人物が画面の中にいると、これが子どもたちを引きつけ、学びたいと思わせるのです」とChristensenは述べています。

研究者たちはまた、物語的なストーリー(narrative story)の中に学習を組み込んでいる動画はほとんどなく、『ブルーズ・クルーズ(Blue’s Clues)』や『ドーラといっしょに大冒険(Dora the Explorer)』のようなテレビ番組のように、視聴者に直接語りかけてやり取りを促しているものは約半数しかなかったと指摘しています。だからといって、これらの動画が必ずしも子どもたちにとって悪いものであるということにはならないのですが、研究に裏打ちされた「理解力を向上させる特徴」のいくつかが欠けていることは事実です。

「子ども向けのメディアは必ずしも有益で教育的なものである必要はないのです」、とChristensenは述べています。親たちの多くは、子どもたちの注意を引き付けておき、その間に大事な用事を片付けたり、大変な一日を終えて一息入れたりするための時間を確保するために動画というツールを利用しています。「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、外部との接触がないときに、夕食の用意でも、赤ちゃんへの授乳でも、どんなことをするにしても、その10分間を確保するために動画を見せておく時間(スクリーンタイム)がいかに助かるものであるかが明らかになりました。たとえ教育的なものでなくとも、スクリーンタイムを家庭に役立てる方法はあるのです」とChristensenは語りました。

「研究によると、友達のように感じられる人物が画面の中にいると、これが子どもたちを引きつけ、学びたいと思わせるのです」―Claire Christensen

心配する親たちに対してChristensenが勧めるのは、少なくとも動画というこの新しいスタイルの子ども向けメディアの効果について更なる研究が進むまでは、YouTubeのコンテンツと教育系テレビ番組とのバランスをとることです。教育系のテレビ番組は、子どもたちが特定の登場人物との繋がりを深め、ストーリーをベースにした学習を体験できる機会となるだけでなく、集中力を長く持続できる可能性もあります。Christensenはまた、子どもがYouTubeで見ているコンテンツから学んだ内容に関連して、親が子どもと関わりを持つことを勧めています。

「YouTubeの動画は、子どもたちに返事を求めたり、子どもたちが心を通わせられるようなキャラクターを使ったりしていないため、親が代わりに心を通わせる接点になることが重要です。子どもがYouTubeで動画を多く見ているのなら、それについて話をしてみて、子どもたちの生活と結びつけてみてください。そうすれば、このようなコンテンツがより身近なものに感じられるのではないでしょうか」とChristensenは述べています。

Christensenと彼女が所属するチームは、すでに次の段階に取り組んでいます。この研究のデータを使って、機械学習モデルのトレーニングを開始しています。大量の動画を調査して子供たちが何を見ているかを分析するのです。子どもたちのメディア活用がどのように変化し、それが家庭にとって今後どのような意味を持つのか、より正確に把握することが期待されています。

「この一連の研究の目的は、親たちがどのように子ども向けメディアを活用しているかを理解することです。これには、教育ツールとしての利用、また、より広範囲に家庭のニーズを満たすためのツールとしての利用の両方を含みます。私たちは、家族にとって意義のある方法でスクリーンタイムを活用する一助となる方法を見つけたいのです」とChristensenは語りました。


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