自宅の冷蔵庫が、自分専用の栄養士になってくれるとしたら?
もし自宅の冷蔵庫が、自分専用の栄養士にもなってくれるとしたら?これは夢のような話に聞こえるかもしれませんが、SRI Internationalからスピンオフしたスタートアップ企業である「Passio」のチームが、この夢を現実のものにしようとしています。Passioは、コンピュータビジョンの機械学習分野におけるイノベーター企業です。この市場は急速に成長しており、2023年までに170億ドルを超えることが予想されています。同社の最初の製品であるFoodAIは、密かに進められた約2年間の開発期間を経てラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で初めて一般に公開されました。
食事の記録に関する考え方を変える
Passioのアイデアが生まれたのは何年も前で、共同創業者のディミトリ・スターソン(Dmitriy Starson)とデヴィッド・ウェスタンドルフ(David Westendorf)が大学時代にスポーツをしていた頃のことです。彼らはエリートのアスリートの栄養管理は細心の注意を払って指導が行われるのに対し、一般の人々の場合はこの点が大きく欠落していることに気が付きました。そして、実際に彼らの考えは正しいのです。
アスリートにはパーソナル栄養士とトレーナーが付きますが、一般の人々が目にするのは、栄養に関しての否定肯定など様々な内容の記事ばかりで、その内容は日常的に変わります(そんな現実にスターソンとウェスタンドルフはうんざりしています)。例えば卵、赤ワイン、ベーコンなどの食品は、ある記事では健康的とされていたかと思えば、また別の記事では悪者扱いになっています。「食品の認識」と「食事の記録」に対して新たなアプローチをとるべき時がきたのです。
ビジョンが現実に…
PassioはRobert Bosch社のBSH Kitchen部門と提携し、冷蔵庫に入っている食品を自主的に認識する「スマート冷蔵庫」に向けたビジョンを実現しました。
Bosch社が行った「スマート冷蔵庫」のデモンストレーションでは2台のカメラがドアの内側と庫内に取り付けられ、冷蔵庫のドアが閉じるたびに静止画像を撮影します。Passioのテクノロジーが冷蔵庫のファームウェアに統合されることで冷蔵庫の中身を識別し、シームレスなユーザーエクスペリエンスを実現しました。一度で同時にすべての食品を認識します。また、冷蔵庫の中身によっては、入っている食材を基にコンパニオンアプリが最適なレシピを生成します。
PassioのAIは、包装の有無やパッケージにかかわらず、最大30種類の食品を認識するように訓練されています。この中には、生の果物や野菜、パック入り調味料や乳製品、そして包装された肉やシーフードといった多様な食材も含まれています。
Passioが実現したいビジョンは、コンピュータビジョンと人工知能が全く新たな食品データベースと組み合わされ、個々人の事情を理解した上で個人の食事摂取に与える根本的な価値を決めることが可能かどうか、ということにかかっています。栄養士は、食品にはそれぞれ細かな違いがあるので、一般化はできないと教えてくれるでしょう。例えば、初めてマラソンに挑戦する人の食事は、出産したばかりの母親の食事とは異なります。Passioの食品認識機能は95%以上の精度で食品を識別してログに記録をするので、料理人、アスリート、医師、どんなユーザーも食品のカロリーや微量栄養素、多量栄養素、脂肪含有量などについて正確な知見を得ることができます。また、肥満、ケトン食、ビーガンなど、特別な配慮が必要な食事への対応も支援します。
AIの次のフロンティアは…
PassioのFoodAIは、食生活の追跡、スポーツやフィットネス、慢性疾患に関するモバイルアプリや、スマートIoT機器(電子レンジ、コンロ、スーパーのレジなど)を機械学習の世界に取り入れ、世界に認められるレシピやトレーニング用の食事、健康的なライフスタイル管理を実現します。
Passioアプリのインターフェース
BSHは#CES2020にて1月7日〜11日、中央ホールの12401番ブースでスマート冷蔵庫のデモンストレーションを行いました。
Passioは2020年初め、フォーチュン100企業といくつかのアプリやスマート家電の分野でさらなる提携を行うべく、発表を行う予定です。PassioがAIのサポートを貴社の製品にどう適用するかについて詳しくお知りになりたい場合は、デヴィッド・ウェスタンドルフ(david@passiolife.com)までお問い合わせください。
筆者:David Westendorf (デヴィッド・ウェスタンドルフ)/ Passio’s co-founder (Passioの共同創業者)